卒園式の練習で泣いてしまった年長担任保育士の話



この記事の結論

保育士が卒園式で泣くのは、我慢しなくていいことです。
涙が出るのは感情的だからではなく、その一年を本気でやってきたからです。
そして、保育が好きだったことと、保育士を続けられることは、別の話です。

年長クラスの担任時代、卒園式の練習で、泣いてしまったことがあります。
本番ではなく、練習で。しかも、子どもたちの目の前で。

保育士になって六年目か七年目、大規模な保育園で五歳児クラスの担任をしていた頃のことです。
当時の私は、とにかくがむしゃらでした。
うまくやれている自信もなく、ただ目の前のことを必死にこなしていた時期です。

もし今、同じように涙が出てしまった方がいたら、伝えたいことがあります。
それは、恥ずかしがらなくていい、ということです。



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もとえん先生

記事を書いた人:もとえん先生

✔️ 保育士歴20年以上・施設長経験7年

✔️ 大規模園〜小規模園まで幅広く経験

✔️ 採用担当として面接する側も経験

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目次

卒園式の練習が始まるのは、本番の一か月ほど前

三月中旬の卒園式に向けて、練習が始まるのはおおよそ一か月前です。
園によって違いはありますが、私のいた園ではそのくらいでした。

やることは思いのほか多くあります。
名前を呼ばれたときの返事の仕方、証書の受け取り方、椅子までの歩き方、座って待つ時間の姿勢。
五歳児といっても、じっと座っていられる時間には個人差があります。
全員が同じ動きをそろえることが目的ではなく、その子なりに落ち着いて
式に参加できるようにしていく、という感覚に近いものでした。

そして、卒園式の定番とも言えるのが「年長さんの言葉」です。

保育園での思い出を一人ひとりが分担して読み上げていく、あの場面です。
「運動会でがんばったマーチング」
「発表会では、劇をしたり、みんなで楽器を使って演奏をしました」と、
短い一文ずつをつないでいきます。担任が文章を考え、それを子どもたちに割り振って、
少しずつ覚えてもらいます。

朝の窓辺に置かれた観葉植物とマグカップのイラスト

「年長さんの言葉」を読み上げた瞬間、涙が止まらなくなった

その日は、子どもたちに初めて言葉を伝える日でした。
「こんなメッセージを覚えて、本番でみんなで言おうね」と、
担任である私がまず全文を読み上げる。ただそれだけの場面です。

読み始めて、いくつ目かの一文にさしかかったところで、急に喉の奥が詰まりました。

自分で書いた文章のはずなのに、一文ごとに、その日の光景が浮かんでくるのです。
入園したばかりの春のこと。
うまくいかなくて何度もやり直した行事のこと。
子ども同士のけんかを止めながら、どう伝えればいいのか分からず立ち尽くした日のこと。

走馬灯のように、と言うのが一番近い感覚でした。

楽しかった思い出だけが浮かんだわけではありません。
むしろ、しんどかった記憶のほうが多かったかもしれません。
それでも、いよいよこの子たちは卒園していくのだ、という思いが押し寄せて、
感無量、としか言いようのない気持ちになりました。

気づいたら、涙が止まらなくなっていました。

つられて泣きだした子どもたちのこと

そのクラスには、気づけばいつも私のそばにいて、あれこれと話しかけてくれる子たちがいました。
少しおませなところがあって、大人の様子をよく見ている子たちです。

その子たちが、先に泣き始めました。

何が起きたのか分からないまま、つられて泣きだす子も出てきます。
その様子を見たら、私のほうがもう、どうにもなりませんでした。

担任が泣いて、子どもが泣いて、練習が止まる。
今思えば、ずいぶん締まらない光景です。それでもあの時間のことを、
私は今でもよく覚えています。

保育士が卒園式で泣くのは、恥ずかしいことではない

若い頃の私は、担任が泣いてどうするのだろう、と自分を情けなく思っていました。
式を進行する立場なのだから、感情はしまっておくべきだと考えていたのです。

今は、そう思っていません。

涙が出るのは、その一年を本気でやってきたからです。
適当に流していた一年なら、思い出は浮かんできません。
浮かんでくるものが多いということは、それだけ関わったということです。

もし今、本番で泣いてしまいそうで不安な方がいるなら、
練習のときに一度、思い切り込み上げておくのがいいと思います。
私の場合は、練習で泣ききったおかげで、本番はなんとか持ちこたえられました。

そして、保育の仕事にはこういううれしい記憶も、思い出したくない記憶も、
どちらも同じだけ残ります。

私の場合、強く叱られたときの記憶は二十年たった今も消えていません。
そのことは強く叱られた記憶は20年残る|元保育士の実話に書きました。


便箋とクレヨンが置かれた机のイラスト

保育が好きだったことと、保育士を続けられることは別

あれだけ泣いた私が、それから長い時間をかけて、最終的には保育の現場を離れました。

矛盾しているように見えるかもしれません。けれど、実際にはそうではないのだと思います。

子どもたちと過ごした時間が好きだったことは、今でも本当のことです。
卒園式で泣いた気持ちに、嘘は一つもありません。
それでも、好きだという気持ちだけでは埋められないものが、少しずつ増えていきました。

「結婚して、出産して」という区切りが、自分には来なかった

保育士は女性の多い職場です。
結婚や出産のタイミングで一度現場を離れたり、働き方を変えたりする人がたくさんいます。
長いあいだ、それが一つの区切りのように扱われてきました。

私には、その区切りが来ませんでした。

独身のまま、これから先も自分で働いて生きていく。
誰かに支えてもらう前提が、自分の人生設計にはない。
当たり前のことなのですが、ある時期にそれをはっきりと自覚して、
目の前に大きな壁が立ったような感覚になりました。

いつまで、と区切って考えることができない。ずっとです。

五十代、六十代で今の働き方を続けている自分が、想像できなかった

体の変化は、思ったより早く来ました。
三十歳を過ぎたころから不調を感じるようになり、先輩に勧められて整骨院に通い始めました。
週に一度のペースで通い、保険のきかない治療にも手を出しましたが、
はっきり良くなったという実感は最後まで持てませんでした。

抱っこの姿勢一つとっても、体には確実に効いています。
未満児クラスでは片手を空けておく必要があるので、どうしても片側だけの抱っこになります。
重心が傾いたまま、一日中動き続けることになるのです。

後年、小規模の園で働くようになってから、六十代、七十代で現役を続けている保育士さんたちと
一緒に働く機会がありました。
腰や足に痛みを抱えながら、それでも子どもの前ではしっかり保育をされる方たちで、
心から尊敬していました。

同時に、自分の二十年後を見た気がしました。

保育が嫌いになったわけではありません。
ただ、この体で、この働き方のまま、あと二十年、三十年続けていけるのか。
そう考えたときに、答えを出せませんでした。

好きなのに続けられないのは、甘えではありません

「子どもは好きなのに、続けられる気がしない」

この感覚を、自分の甘えだと思ってしまう方がいます。でも、それは甘えではありません。
好きであることと、その環境で働き続けられることは、はじめから別の問題だからです。

辞める辞めないを決める前に、まずお金の面から足元を固めておくと気持ちが軽くなります。
私が実際にやったことは独身40代、固定費見直しで月5万円を辞める軍資金ににまとめました。

そのうえで、保育の仕事そのものを手放すのではなく、働く場所を変えるという道もあります。
同じ保育士でも、園が変わればまるで別の仕事のようになることは、実際にありました。
詳しくは保育士を辞めたい=保育が嫌いなわけじゃないに書いています。

卒園式についてよくある質問

卒園式の練習はいつから始まりますか。
園によって差はありますが、三月の式に向けて一か月前後から始めるところが多いようです。
私のいた園では一か月ほど前からでした。

保育士が卒園式で泣いてしまうのは、良くないことですか。
そんなことはありません。ただし進行を担当する場合は、泣いても進められるように、
練習の段階で一度感情を出しておくと本番が楽になります。

子どもがつられて泣いてしまったら、どうすればいいですか。
無理に止める必要はないと思っています。泣いたあとに落ち着ける時間を少し取って、
そこから練習を再開すれば十分間に合います。

おわりに

卒園式の練習で泣いた日のことを、私は失敗した記憶としては覚えていません。
あの一年を本気でやったのだという、証拠のようなものとして覚えています。

その気持ちを持ったまま、私は働く場所を変えました。
好きだった記憶を否定せずに、次の場所へ持っていくことはできます。

今、同じ場所に立っている方へ。その涙は、あなたが手を抜かなかったからこそ出るものです。

※この記事は、私自身の経験にもとづく一つの視点です。
卒園式の進め方や練習の期間は、園や地域によって異なります。
登場する子どもたちについては、個人が特定されないよう表現を調整しています。

保育士の転職について、何から手をつければいいか迷っている方は、
保育士を辞めたいと思ったら|5ステップの進め方から読んでみてください。




「このまま続けるか、辞めるか」で迷っている方は、
辞めるか迷う保育士さんへ|転職活動はしんどい、でも。もあわせて読んでみてください。
何を先に確かめればいいかを書いています。



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この記事を書いた人

保育士歴20年以上、施設長経験7年。面接・採用・退職、保育士のキャリアの節目を現場の内側から見てきました。きれいごとだけでなく、正直な想いを綴っています。

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